忘れもしない高1の夏。
ジャズのコンテストで
表彰台に上がった彼に、
わたしはたちまち目を奪われた。
生まれて初めての一目惚れだった。
その人は、”中性的”という
表現がよく似合う人。
しなやかで華奢なカラダと
切長の目が印象的だった。
彼に恋してからというもの、
わたしは密かなファンとして
Facebookの投稿や
YouTubeのライブ映像を
見ることが日課になった。
彼は画面越しのアイドル的存在。
淡い恋心を抱きつつも、
どうすることもできなかった。
彼に一目惚れした夏から4年後。
わたしはボランティアとして
ジャズのコンテスト会場にやってきた。
人づてに聞いた話では、
彼もこの会場にいるらしい。
わたしは相変わらずファンのまま。
そんなわたしを見兼ねた
ボランティアメンバーたちに
背中を押されて、今年こそは
彼に話しかけることを決心した。
会場を見渡すと、
昔と変わらない彼の姿が。
あぁ、やっぱり好きだ。
「ライブがあったら見に行くんで
連絡ください。」
長年想い続けた人を
目の前にしたわたしは、
紙の切れ端に連絡先を書いて
渡すことが精一杯。
その後のアクションは
彼に委ねることにした。
でも、それから待てど待てども
彼からの連絡はなかった。
脈なし、以上。
わたしの長い片想いが散った。
季節は巡り、
彼の記憶も薄れてきた頃。
とあるジャズのライブを
友人と見に行くことになった。
もしかしたら彼も来るかもしれない。
ふと彼の姿が脳裏に浮かんだ。
共通の知人に彼の了承を得て
LINEのIDを教えてもらったわたしは、
恐る恐る連絡してみることに。
どうしても彼に会いたかった。
メッセージを送信してすぐに
「見に行くよ!」という返事が。
この機会を逃したら次はないと思い、
「舞台終わりにご飯行きませんか?」
と誘うと、彼は二つ返事でOKしてくれた。
それからは驚くほどトントン拍子だった。
舞台後のご飯デート以来、
頻繁に電話やデートをする仲に。
画面越しに眺める存在だった彼と、
夢にまで見たような日々を過ごした。
そして、彼からの告白で、
わたしたちは晴れて恋人同士になった。
この世界には、
想い続ければ叶う恋もあるらしい。
しかし……
交際をスタートしてから1年間、
わたしは彼とセックスできずにいた。
あれだけ大好きだった人と
やっとの思いで付き合えたのに、
生理を理由にのらりくらりと
誘いを断り続けて、
気づけば処女のまま20歳を迎えた。
もしも今後、
別れることになってしまったら。
もしも今後、
彼に傷つけられてしまったら。
考えすぎだと分かっていたけれど、
初めてを捧げる相手だけは
慎重に選びたかった。
この人だと確信できる相手じゃないと
絶対に嫌だった。
彼に不安要素があったわけではない。
ただ、わたしの覚悟の問題だった。
そして、付き合って2年目の夏。
その日は懐かしのジャズコンテストに
観客としてふたりで参加したあと、
会場近くのホテルに宿泊した。
夜は思い出の地ということもあって
昔話に花が咲く。
彼とこうやって過ごせる日が来るなんて
8年前のわたしは想像しただろうか。
あぁ、幸せだなぁ。
夜が深くなりベットに入ると、
わたしに覆い被さろうとする彼。
いつものように彼の誘いを
かわそうと渋っていると、
「君のことが好きなだけなんだけどな。」
と、彼が悲しげな表情で言った。
その言葉を聞いた瞬間、ハッとした。
わたしの心のモヤモヤが
すーっと晴れたのだ。
どうして今まで
意地になっていたんだろう。
どうしてすぐに
彼を選ばなかったんだろう。
懺悔に近い気持ちでいっぱいになった。
6年間ずっと片想いをしていた彼。
恋人になってからは、
わたしの気持ちを最優先してくれた彼。
初めてを捧げる相手として
彼以上に相応しい人は、
今後現れないかもしれないというのに。
あぁ、ごめんなさい。
どう考えても貴方しかいないや。
そうして、彼の誘いを受け入れた。
初めてのソレはあまりにも
痛すぎて泣いてしまった。
そんなわたしを見て、
アソコを硬くする彼。
「泣き顔見たら興奮するんだけど。」
彼のことはなんでも知っている
つもりだったけれど、
まだまだ知らない一面もあったんだな。 あぁ、愛おしくて笑えてくる。
大好きな人との初体験。
28歳となり彼と別れた今でも、
わたしはあの日の選択を後悔していない。
彼と出会わなければ、
今でも経験をしないまま
大人になっていたのだろうか。
そんなことを、
毎年夏になると考えてしまう。
あぁ、やっぱり彼以上の人なんて
現れないや。
投稿者: roeism8888
わたしと彼の、秘密のアソビ。
「アレクサ、キューピー
3分クッキングを流して。」
電気を消して真っ暗にした部屋に、
わたしの単調な声が響く。
わたしと彼にとっては
お馴染みのこのセリフが、
今からベットの上で行われる
アソビの始まりの合図だった。
ルールはとてもシンプルで、
音楽が鳴り止む前に
彼が果てたらわたしの勝ち。
耐えることができたら彼の勝ち。
なんとも滑稽なこのアソビを
これまで何十回と繰り返してきたが、
いつもわたしの余裕勝ちだった。
今日こそは負けたくないと
気合を入れる彼。
どうせ今日も勝つだろうと
自信満々なわたし。
アソビと言えども
試合前のような緊張感のなか、
彼はベットの上で仰向けになって
ふぅーっと息を吐いた。
聞き慣れたあの軽快な音楽が
部屋に流れはじめると、
わたしは彼のズボンに手をかけ、
彼のアソコをまさぐる。
時にはローションを使ったり
口を使ったりすることもあるけれど、
今日は動画を見て覚えた
手技を試してみたかったから、
あえて手だけで挑んだ。
時折声を漏らしながらも、
歯を食いしばり快感に耐える彼。
そんな彼の反応を見つつ
あの手この手で仕掛けていく。
「あぁ、ギブ。」
約2分30秒後。
負けを覚悟した言葉を発して、
彼は静かに果てた。
そして、音楽が止まった。
(はい、今日もわたしの勝ち。)
ベットの上でぐったりしている
抜け殻のような彼を横目に、
わたしはそそくさと
ティッシュを取りに行く。
負けて悔しそうな彼に
「もう1回戦する?」
とちょっぴり意地悪な感じで聞くと、
それは無理だと首を横に振った。
どうやら連続で勃たせることが
できないらしい。
しばらくして、
彼はいつものようにわたしを抱き寄せて
スヤスヤと眠りについた。
そんな彼の寝顔を見てほっと息をつく。
今日もセックスせずに済んで良かったと。
優しくて、イケメンで、
甘えん坊な彼がとても好きだった。
でも、彼とのセックスは嫌いだった。
わたしにとって彼のモノは
大き過ぎたのだ。
付き合って間もない頃は、
痛みに耐えてなんとかやりきっていた。
少しの時間だけ我慢すればいい。
彼が喜んでくれるならそれでいい。
そんなことを思っていた気がする。
でも、付き合いが長くなるにつれて、
わたしは彼と夜を共にすることを
徐々に避けるようになっていった。
だって痛いんだもん。
このままだと彼に愛想を
尽かされてしまうかもしれない。
そんな危機感を覚えたタイミングで、
わたしからこのアソビを提案した。
セックスはできなくても
出るものが出てしまえば、
彼の欲求も少しは解消される
かもしれないと考えたのだ。
状況とミスマッチであればあるほど
面白みがあるかな?と思い選んだ、
キューピー3分クッキングのテーマ曲。
どこの誰よりも早漏気味だった彼には、
ぴったりの長さだったようだ。
「最近、マヨネーズを見ると
ムズムズするんだよね(笑)」
と恥ずかしそうに話す彼が、
今日も最高に愛おしい。
さぁ、次はどんなアソビをしようかな。