「アレクサ、キューピー
3分クッキングを流して。」
電気を消して真っ暗にした部屋に、
わたしの単調な声が響く。
わたしと彼にとっては
お馴染みのこのセリフが、
今からベットの上で行われる
アソビの始まりの合図だった。
ルールはとてもシンプルで、
音楽が鳴り止む前に
彼が果てたらわたしの勝ち。
耐えることができたら彼の勝ち。
なんとも滑稽なこのアソビを
これまで何十回と繰り返してきたが、
いつもわたしの余裕勝ちだった。
今日こそは負けたくないと
気合を入れる彼。
どうせ今日も勝つだろうと
自信満々なわたし。
アソビと言えども
試合前のような緊張感のなか、
彼はベットの上で仰向けになって
ふぅーっと息を吐いた。
聞き慣れたあの軽快な音楽が
部屋に流れはじめると、
わたしは彼のズボンに手をかけ、
彼のアソコをまさぐる。
時にはローションを使ったり
口を使ったりすることもあるけれど、
今日は動画を見て覚えた
手技を試してみたかったから、
あえて手だけで挑んだ。
時折声を漏らしながらも、
歯を食いしばり快感に耐える彼。
そんな彼の反応を見つつ
あの手この手で仕掛けていく。
「あぁ、ギブ。」
約2分30秒後。
負けを覚悟した言葉を発して、
彼は静かに果てた。
そして、音楽が止まった。
(はい、今日もわたしの勝ち。)
ベットの上でぐったりしている
抜け殻のような彼を横目に、
わたしはそそくさと
ティッシュを取りに行く。
負けて悔しそうな彼に
「もう1回戦する?」
とちょっぴり意地悪な感じで聞くと、
それは無理だと首を横に振った。
どうやら連続で勃たせることが
できないらしい。
しばらくして、
彼はいつものようにわたしを抱き寄せて
スヤスヤと眠りについた。
そんな彼の寝顔を見てほっと息をつく。
今日もセックスせずに済んで良かったと。
優しくて、イケメンで、
甘えん坊な彼がとても好きだった。
でも、彼とのセックスは嫌いだった。
わたしにとって彼のモノは
大き過ぎたのだ。
付き合って間もない頃は、
痛みに耐えてなんとかやりきっていた。
少しの時間だけ我慢すればいい。
彼が喜んでくれるならそれでいい。
そんなことを思っていた気がする。
でも、付き合いが長くなるにつれて、
わたしは彼と夜を共にすることを
徐々に避けるようになっていった。
だって痛いんだもん。
このままだと彼に愛想を
尽かされてしまうかもしれない。
そんな危機感を覚えたタイミングで、
わたしからこのアソビを提案した。
セックスはできなくても
出るものが出てしまえば、
彼の欲求も少しは解消される
かもしれないと考えたのだ。
状況とミスマッチであればあるほど
面白みがあるかな?と思い選んだ、
キューピー3分クッキングのテーマ曲。
どこの誰よりも早漏気味だった彼には、
ぴったりの長さだったようだ。
「最近、マヨネーズを見ると
ムズムズするんだよね(笑)」
と恥ずかしそうに話す彼が、
今日も最高に愛おしい。
さぁ、次はどんなアソビをしようかな。
わたしと彼の、秘密のアソビ。
